思うこと

2022年08月02日

シンプルで本質的ーー板坂元氏『考える技術・書く技術 』講談社現代新書



『考える技術・書く技術 』講談社現代新書


先日読了した『現代思想入門』の最後部に掲載されている他の書籍をパラパラ見ていて
ふと目にとまったのがこの本でした。

1973年出版で、著者は板坂元氏。シンプルなタイトル。
総じて現代社会に通じる普遍的な要素=本質が書かれていると感じました。

目次を見るだけで、中身を知りたくなります。

  • ①頭のウォームアップ
  • ②視点
  • ③読書
  • ④資料整理
  • ⑤文房具
  • ⑥発想
  • ⑦説得
  • ⑧文章
  • ⑨構成
  • ⑩仕上げ

    実際に読んでみて、考えること、そして、書くことにおいて
  • 「技術」を身につけることの大切さを感じました。

ポイントなのは、「考える」が先だということ。

冒頭、「頭の良さとは」という問いかけがあります。
ペーパーテストで良い点数を取ることはもちろん大事ですが、この本で言われているのは「型を見つけることの大切さ」。

型をとらえて、それに対して適切な処置をすること(P24)

頭がよいとか悪いとかということも、型を早く見つけるかどうか、また型をたくさん持っているかどうかの差に換算できることが多い。(P24)

そして、型をとらえることができたら、それによって見つけた「法則性」を、関連する事象と結びつける。それのトレーニングを積むことで脳が使われる。
トレーニング次第で頭はよくなると言われると、勇気づけられます。

その一方で、「型にはまった考え方から離脱するために心身を訓練すること」(P123)の重要性も説いています。そのことを、板坂氏は「バンカラ」という言葉を用いています。

これまでの経験や習慣のみを基盤にして、自分は物事の本質を理解しているという思い込みに陥ってしまわないよう警鐘も鳴らしています。

努力をすれば、優等生になれる確率は高い。
けれでも、「受け身」の知識・教養だけでは、8割止まりになるといいます。

人生の九八パーセントまでは、これまでの社会によって作り上げられた文化・考え方の積み重ねであろう。そして、個々人が勝負をするのは、けっきょく、残りの二パーセントのところなのである。(P 125)

  • その「二パーセント」に必要な要素を、板坂氏は「大胆な挑戦」と表現しています。
  • そこに模範解答はないからこそ、自分が感じる課題に対して確立されたルールを突破していくことも最後は求められるのだと感じました。

ここまでは「考え方」の技術において印象的だったこと。
次は、「書き方」の技術において興味深かったことです。

前述の「バンカラ」という言葉に加えて、「情動」も心に残ったワードでした。
どういう文章が読み手の心を捉えるのかというと、「相手の情動を刺激するもの」(P134)

そのために、「飽きが来ないように、かつ適度に相手の精神集中をうながすように、緩急をつけることが必要」(P134)とのこと。そのために必要な要素として、

ことばづかいや話の内容や、その他いろいろな技術で読者との対話の場をつくりだすこと(P 142)
相手に理解し同調してもらえること(=情動的)(P131)

が、挙げられていました。
具体的な技術として、数字を使う(数量化 P151)、読者が集中して読める文字数を意識する(三枚主義 P153)、リズム(具体と抽象の変化 P156)とか。

そして最後の「仕上げ」には、心構えが書かれています。
誠実、情熱、努力という言葉は、そのまま見るとありきたりで薄っぺらく思えてしまうけど、この本のまとめとしてみると説得力があります。
そして、「知っていることと知らないことをはっきり区別すること」(P200)
自分の見解や発見を発表するときは、自他の境界線をはっきり示す(P201)
自他と公私を区別すること(P202)
ただ無知で「知らない」のと、その分野である程度精通しているけど「知らない」とは別物ですよね。
い板坂氏は、「自信がなければ知らないといいにくい」と言っていますが、その通りだと思いました。

そして、私は今アスリートのセカンドキャリア・キャリア形成を取材を続けているため
この点について胸に留めておきたいと感じています。

最後に、板坂氏が面白いのは日本離れをしていること。執筆時点で、海外生活を15年以上送っているとのことでした。外の世界を知っているからこそ、見える景色、紡げる言葉がある方なのではと思いました。

この『考える技術・書く技術 』は、物事を考えるうえでの指南書として、手元に置いておきたいと思う一冊です。




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bubba_gump at 11:27|PermalinkComments(0)

2022年07月31日

ジャレド・ダイアモンド著『銃・病原菌・鉄(上) 』(草思社文庫)目次読み

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テーマ:なぜヨーロッパ人が他の大陸を征服できたのか?

背景:現代世界において、各社会間の不均衡が生じている。

理由:大きな不均衡が生まれるには、それなりの明確な要因があってしかるべきだ。

見方:現代社会における不均衡、例えば歴史における勝者と敗者をわける原因や、農耕を始めた人と始めなかった人の差、感染症が集団感染しなかった大陸があった理由などを「そういうものだ」と捉えていたが、なぜその不均衡が生まれたのかについて、人類史の観点から読み解いた一冊。
 


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bubba_gump at 16:38|PermalinkComments(0)

2022年07月28日

板坂元 著『考える技術・書く技術 』(講談社現代新書)目次読み


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テーマ:読者の情動に響く文章の書き方

背景:情報過多の時代において情報処理の技術を心得ておくことが必要であり、その一歩としてまずは自分が知っていることと知らないことを把握した上で、相手の情動を刺激することが求められる。

理由:馬を水際まで連れていくことはできるが、馬に水を飲ませることができるのは容易ではない。

見方:SNSの時代において、書くこと・情報を発信することが誰でもできるようになったが、「書く」ことを分解すると、情報のインプット、情報の整理、読者への説得が必要なる。多角的な方向から書くことの「技術」を解説している一冊。


 

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bubba_gump at 15:57|PermalinkComments(0)

『現代思想入門』千葉雅也氏著


哲学の分野の知識は皆無なのですが、知りたいという気持ちは以前から持っています。
以前、書評で見た『現代思想入門』に興味があり、読了しました。

千葉雅也氏の本も初めて読んだのですが、ご本人が言うように「俗っぽさ」を出した馴染みのある書き方だったこともあり、面白く最後まで読み終えることができました。

そもそも、「現代思想を読むためのポイント」も記述されていて、
初心者としてはディレクションを教えてもらえたことも大きかった。

哲学書は「格式が高い」ものが多く、途中離脱することがこれまでも多かったけど、
まずは骨子を捉えて、格式が高いように見える言い回しに惑わされてはいけないのだと学びました。

そして、なぜ今「現代思想なのか」という点について。
現代思想は、秩序を強化する動きへの警戒心を持ち、秩序からズレるもの、
すなわち「差異」に注目する。(P14)
秩序維持や安心・安全の確保が重んじられがちの現代において、そのレールから外れるものも必要なのではという考えを持つことも大事だと認識しています。

その中で繰り返し出てきた「二項対立」と「脱構築」というワード。
二項対立のプラス/マイナスを線引きするのではなく、その線引きの揺らぎに注目していく脱構築ーー。

本書では、それらを現代思想家たちの紹介を通して、解説されています。
 それを「グレーゾーン」との言葉で語られているけれど、このグレーゾーンという言葉が今の時代に必要な要素なのではと感じます。

あらゆることにおいて、白黒つけるのではなく、こうあるべきとは考えず、その曖昧さをも認めること。
それが今注目されている多様性(私はこの言葉あまり好きではないけど……)、ダイバーシティ、インクルーシブという概念につながるのではと思いました。

余談ですが、私は大学時代に完成できなかったけど、論文を書いていました。
それがまさに、「善と悪の二項対立の曖昧さ」でした。

当時、自分の中で答えを見出せず、ゼミの先生にも相当迷惑をかけたのに、未完成のまま終わりました。
あれから15年経ち、私も少しは大人になり、経験や見識が増えたことで、今改めて気づくこともあるのだろうなと思っています。

『現代思想入門』の感想を考えていて、ふとそんなことを思いました。

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bubba_gump at 09:47|PermalinkComments(0)

2022年07月18日

『現代思想入門』の目次読み

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テーマ:現代思想の入門書

背景:現代はいっそうの秩序化、クリーン化に向かっていて、必ずしもルールに収まらないケース、ルールの境界線が問題になるような難しいケースを無視。

理由:現代思想は、秩序を強化する動きへの警戒心を持ち、秩序からずれる「差異」に注目。排除される余計なものをクリエイティブなものとして肯定。

見方:この本は、二項対立がお互いに依存し合う状態に持ち込む脱構築の構造を捉え、現代思想を読むための指南書である。




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bubba_gump at 05:42|PermalinkComments(0)