2015年04月

2015年04月17日

宮部みゆき『ソロモンの偽証』

『ソロモンの偽証』文庫本6巻を猛烈なスピードで読み終えました。

図書館で予約をした時点で、450人待ち。
半年かけてやっとこ順番が回ってきました。

回ってきたのはいいんだけど、一気に6巻届いてしまったので
期限を気にしながらすごいペースで巻数通り全6巻を読破しました。

読むたびに宮部みゆきさんが好きになります。
前は角田光代さんが一番好きでしたが、今は宮部さんですね。

『ソロモンの偽証』は映画でも公開しているので話題を集めています。
ストーリーはクリスマスの翌日に、ひとりの中学生の死体が学校で発見されるところから始まります。

雪の中で埋もれていたその生徒は柏木卓也。中学3年生の不登校少年でした。
警察の検証で、柏木卓也の死は「自殺」と判断されたのち、3通の"告発状"が届きます。

「柏木卓也は殺された」

そして、本当の「真実」を見つけるために、生徒たちは立ち上がる・・・


読み終えて今回初めて思ったんだけど、宮部さんの作品に出てくる登場人物って
誰一人として共感できないと思う人はいないんだということ。

どんなに憎たらしい奴も、逆にどんなに正義感がある人にも
寄り添える部分があるということです。

ちょっと話が逸れるのですが、私は大学で英文学を専攻していて、
その理由はアーサー・ミラーという米国人作家のことを学ぶことでした。

なぜミラーとかというと、彼が描く登場人物には「善」と「悪」が混在している点に
非常に興味をもったからです。

完全に「善」の人はいないと思うし(神の領域だと思う)、逆に完全に「悪」の人もいないと信じたい。
なので、誰が良くて誰が悪いとは一概に言えないと思うんです。

話を元に戻すと、その「善悪」の部分が宮部さんの描くキャラクターに必ず入っていると思えるんです。
結論、私は『ソロモンの偽証』に出てきた多くの登場人物全員を「好き」と言えます。
とても人間らしいからです。強くもあり弱くもある。だからこそ、共感できるんだと思います。


本を読んでる最中はストーリーに夢中になって頭に入っていませんでしたが、
タイトルの『ソロモンの偽証』というネーミングが素晴らしいなと思いました。

ソロモン・・・知恵者のシンボル。ソロモンが子供のことで争う2人の女の一件で賢明な判断を示した逸話は広く世界に伝わり、後に江戸時代の大岡裁きの話にも取り込まれた。(wikipediaより)

物語の真実が判明するのは、本当に最後の最後です。それまで私は全然わかりませんでした。
『火車』や『模倣犯』もとても面白くて好きな作品んですが、読み進めていくうちに苦しくなっていきました。
正直、何度も読みたいと思えるものではないです。

でも、『ソロモンの偽証』は読むスピードがどんどん加速して、軽くなっていく感じでした。
そして何度でも読みたいと思えるものでもありました。

またひとつ、素晴らしい作品に出会えてうれしかったです。
もし読んだ方がいたらぜひ感想を聞かせてください。
ちなみに私は「ヤマシン」がお気に入りでした笑

『ソロモンの偽証』隠された真実を見抜けるか…最後の晩餐風ポスター公開

映画は観たいと思わないです。
「嘘つきは、大人のはじまり」というキャッチコピーはどうかと・・・
原作と違うのかもしれませんが、ピンとこないタイトルだなと思いました。



 

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bubba_gump at 03:28|PermalinkComments(2)TrackBack(0)book | My favorite

2015年04月03日

No.2 みんなの拠り所になる空間を作りたいby「人という肩書きで生きていく」


「人という肩書きで生きていく」

"No.2 みんなの拠り所になる空間を作りたい" アップしました!
http://bubbagump-0404.hatenablog.com/entry/2015/04/03/212424

店外観


 近所のごはん屋さんオーナーの汐井さん。
元々、ダンサーだった彼女は、今は女性経営者として、そして一児の母として
生きています。

彼女の中に秘めた「想い」とは?
続きは記事をご覧ください。

汐井さん

 

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“個人主義と全体主義” 2014年度同志社大学卒業式祝辞から

今まで生きてきた中で、「よかったな」って思うことは多々あるのですが、
その中でも強く思うのが、同志社大学で学べたことです。

正直、勉強はあまりしなかったし、いろいろ苦い思い出もさくさんあるのですが、
大学の雰囲気というか、あの環境が本当に良かったなって思います。

私が卒業した2008年の卒業式の祝辞で、その時の学長が最後に力強く
「いってらっしゃい!」と言われたのが今でも印象に残っています。
卒業を別れではなく、出発とし、そしてこの港から出航してください、
という想いがとても胸に響きました。


2015年3月30日の卒業式で、大谷實総長が述べられた祝辞が大学HPに掲載されています。
今の日本の社会のことを言及されており、それを公の場でメッセージとして伝える姿勢が
すごなと思いました。

年末に、TV局に勤めてらっしゃる先輩に会った時、
「今の日本は以前、戦争が始まる前の状態にとても良く似てきている」と言ってたのがずっと胸に
ひっかかっていました。

それもあったせいか、大谷総長のメッセージが胸に響きました。
HPに載せてあるものを引用させてもらいます。長いですが、良かったら読んでみてください。


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一言、お祝いの挨拶を申し上げます。
皆さん、同志社大学のご卒業、また、大学院のご終了、誠におめでとうございます。学校法人同志社を代表して、心からお祝いを申し上げます。また、ご両親をはじめ、ご家族の皆様、本日は、誠におめでとうございます。心からお喜び申し上げます。

さて、卒業生の皆さんのほとんどは、これから社会に出て活躍されるはずですが、私は、今日の我が国の社会や個人の考え方の基本、あるいは価値観は、個人主義に帰着すると考えています。個人主義は、最近では「個人の尊重」とか「個人の尊厳」と呼ばれていますが、その意味は何かと申しますと、要するに、国や社会で最も尊重すべきものは、「一人ひとりの個人」であり、国や社会は、何にも勝って、個人の自由な考え方や生き方を大切に扱い、尊重しなければならないという原則であります。個人主義は、利己主義に反対しますし、全体主義とも反対します。
 
同志社の創立者新島は、今から130年前の1885年、同志社創立10周年記念式典の式辞のなかで、「諸君よ、人一人は大切なり」と申しましたが、この言葉こそ、個人主義を最も端的に明らかにしたものと考えられます。
 
この個人主義について、日本の憲法は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、国政の上で最大の尊重を必要とする」と定めています。遅ればせながら、68年前の1947年5月3日に公布された日本国憲法で、個人主義を高らかに宣言したのです。
 
あの悲惨な太平洋戦争の原因の一つであった、全体主義あるいは天皇中心主義といった国や社会のあり方について、深刻に反省し、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」て、全体主義・天皇中心主義の国や社会のあり方を180度転換して、「すべて国民は、個人として尊重される」としたのです。憲法13条は、まさに、日本国憲法の根幹を示すものとして規定されたのでした。

ところで、諸君も十分判っていると思いますが、安倍首相の憲法改正の意欲は並々ならぬものがありまして、早晩、改正の動きが具体的になってくるものと予想されますが、そのために、自由民主党は自民党憲法草案なるものをまとめて公表するに至りました。その中で、「個人の尊重」という文言は改められて、「人の尊重」となっています。起草委員会の説明ですと、従来の「個人の尊重」という規定は、「個人主義を助長してきた嫌いがあるので改める」というものであります。今日の価値の根源となっている個人主義を、柔らかい形ではありますが、改めようとしているのです。このことは、これまで明確に否定されてきた全体主義への転換を目指していると言ってよいかと思います。

先にも申した通り、日本国憲法は、個人主義を正面から認め、人間社会におけるあらゆる価値の根源は、国や社会ではなく、一人一人の個人にあり、国や社会は、何よりも、一人一人の個人を大切にする、あるいは尊重する、といった原理であると考えています。
 
自民党草案の他の規定を見ましても、個人よりも社会や秩序優先の考えかたがはっきりと表れており、にわかに賛成できませんが、私は、個人主義こそ民主主義、人権主義、平和主義を支える原点であると考えています。
 
卒業生の皆さんは、遅かれ早かれ憲法改正問題に直面することと存じますが、そのときには、本日の卒業式において、敢えて申し上げた個人主義を思い起こしていただきたいと思います。そして、熟慮に熟慮を重ねて、最終的に判断して頂きたいと思うのであります。

結びに当たりまして、卒業生、終了者の皆さんのご健康とご多幸をお祈りし、併せて、一国の良心としてご大活躍されますことを期待し、また、お祈りして祝辞とします。
 
本日は、誠におめでとうございます。


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この大学は本当に個人主義でした。そして放任主義でもありました。
でも、困ったときはいつでも手を差し伸べてくれる。そういう学校でした。



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